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記事のトップ > 資料庫パートタイム労働法国会審議 衆議院議事録抜粋 2007年4月11日
第166回国会 厚生労働委員会 第12号
平成十九年四月十一日(水曜日)
午前九時三分開議
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(内閣提出第三七号)
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案(西村智奈美君外二名提出、衆法第九号)
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前略
○櫻田委員長 内閣提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案及び西村智奈美君外二名提出、短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案の両案を一括して議題といたします。
この際、お諮りいたします。
両案審査のため、本日、政府参考人として総務省自治行政局公務員部長上田紘士君、統計局長川崎茂君、厚生労働省医政局長松谷有希雄君、健康局長外口崇君、医薬食品局食品安全部長藤崎清道君、労働基準局長青木豊君、雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君の出席を求め、説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○櫻田委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。
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○櫻田委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。園田康博君。
○園田(康)委員 おはようございます。民主党の園田康博でございます。
ただいま議題となっておりますパート労働法の改正案、これにつきまして質問をさせていただきたい、そのように思っております。後ろの時間が決まっておりますので、私も手短に御質問をさせていただくと同時に、明快な御答弁をお願いしたいというふうに思っております。
そして、大臣、昨日は参考人の方々においでをいただきまして、政府案あるいは私ども民主党案に対してさまざまな御意見を賜りました。総じて、私ども民主党案に対しましては、理念的には大変一定の評価をいただけるという御評価をいただいたというふうに思っております。
やはり、このパート労働法の改正案というものは、今の現実に働いていらっしゃる方々にとってみれば大変待ち遠しいものでありまして、したがって、一刻も早く、政府の方もそういった方々の現実、現状をしっかりととらえていただいて、いい法案へと向かっていただきたいなという期待を込めさせていただきたいと思っております。
そこで、質問に入る前に、先週の四日でございましたけれども、山井議員から、今回のパート労働法、政府案に対しての質問の中で、いわゆる対象者、正社員と同視すべきパートについての差別的取り扱いの禁止、これについての対象者がどれぐらいいらっしゃるんだと。大臣は、根拠的なものがまだ不明確であるというような部分も示しつつ、いらっしゃるんだということをおっしゃっておられたわけでございます。したがいまして、それに対して、では、実際にいるという根拠を示してほしいという質問をさせていただいたところ、それぞれのいろいろなやりとりがあったわけでありますけれども、その中で、今週、次回の委員会までにぜひ調べて、調査をしてお示ししてほしいという要望を出させていただいたところであります。
その事例について、大臣、調査をされた結果、どのような結果があったかということをまずお伺いしたいというふうに思います。
○柳澤国務大臣 まず、昨日の参考人の意見聴取におきまして、それぞれに、政府案、民主党案、これについていろいろな御論議があったという御報告もいただき、また、園田委員の方からは、現実にこの法律を適用になる、そういうことの見込みの人たちからは非常にこの改善について期待があるんだから、よく、しっかりやれ、こういう御激励をいただきまして、この御激励に対しては、しっかりと私ども政府として受けとめて努力をしてまいりたい、このように思っておりますことを申し上げたいと思います。
差別禁止規定の対象者の事例について、山井委員の質疑と私どもの答弁につきまして前回いろいろな往復があったわけでございますけれども、これにつきましては、個別に当たるということについては、いろいろな事情からこれを行うということは困難というふうに、あるいは適切でないというふうに考えたところでございます。
しかしながら、事務当局の方から事業主団体に問い合わせたところでは、差別的取り扱い禁止の対象と考えられるパート労働者は、パート労働者の基幹化が進んだ流通業等ではなくて、むしろ相対的に基幹化がおくれている製造業等に多く存在していると考えられるというようなことで、この団体の本部にも会員企業から差別的取り扱い禁止規定についての問い合わせが多数寄せられているということの報告があったところでございます。
また、昨日の参考人質疑におきましては、日本経団連の松井労政第二本部長の意見陳述にあったそうでございますが、差別的取り扱い禁止は、人事労務管理への影響が極めて大きく、実際に地方の企業や関係業界から相談が多く寄せられているという趣旨の御説明があったようでございます。
このような事実を踏まえますと、差別的取り扱い禁止の対象者が存在することは明らかではないか、このように思っておりますが、特定の実例をお示しすることは難しいし、また、適切でもないということで御理解を賜りたいと思います。
○園田(康)委員 そうしますと、事業主団体に対して事務当局がまず問い合わせをした、それに対して多数の意見があったということで、大臣はそれを今御報告されたというふうに理解をいたしました。
しかしながら、私は、それでは実は不十分ではないのかなというふうに思っております。すなわち、これは、大臣ではなくて事務方の方で結構でございますけれども、どういう形でヒアリングをされて、それが多数あったということでありますけれども、ではどのぐらいあったのかということもきちっと調査をされたのかどうか、私は疑問があるわけでございます。私も素直な人間でありまして、大臣も大変素直な方であるというふうに拝察させていただいておりますので、事務方から言われれば、そのまま、はい、そうですかというふうに私も思ってしまうんですが、ただ、それがきちっと、本当に事実かどうかということをやはりお示ししていただかなければ、少なくとも国民は納得しないし、先般の山井議員も絶対にこれは承服しかねるというふうに思われるのではないのかなと私は思っております。
したがって、事業主団体に問い合わせたという事実だけをもって、これが根拠になるというのは少し弱いのではないのか。逆に、それが仮に、では他の団体からそういった事実はないと言われれば、それがないということになってしまいかねないわけでございます。したがって、その辺の調査をしっかりと厚労省の事務方としてやるつもりはあるのかどうか。局長、もしそのおつもりがあればさらにお答えをしていただきたいなというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○大谷政府参考人 今回の法律でいいます差別的取り扱いの禁止となる対象事例でありますけれども、これも、先般の御審議の中でも、事実認定について非常に困難な面が多々あるということで、これは、両者の言い分を調整して、過去のケースでも裁判によって初めて明らかになったというような形もあるわけでありまして、非常に確定がしにくいというのがまず一つであります。
また、今回の法律で禁止対象になるというものは、現在の法制の中でも民法上の公序良俗違反にもなりかねない、そして、今回法律が改正されると違反になるというわけでありますから、これは、事業主に聞いて、私どもがそういうことでありますというのは、なかなか申し出いただくのも難しいということ等々ありまして、非常に確定に苦慮しておるというのが実情でございます。
その事情を事業主団体に我々が問い合わせましても、やはり事業主団体の方も、Aという企業が実際には違法かもしれないということで話をしてきているというあたりは、これはなかなか確たることを集計するのは難しいという事情もあるようでありまして、我々も、存在するということを団体から確認することはできましても、どこどこに何件、何人とか、なかなかそれがとりがたいということで、その実例、数字について申し上げるのが難しい、こういうことを申し上げたところであります。
ただ、きのうの参考人の意見陳述にもありましたが、今回の差別禁止対象の考え方でありますけれども、正社員と同視し、例えば退職金や住居手当を含めて全く同じ処遇を当てはめようというのが今回の趣旨でありますから、それに適当な対象はどういう人かということについて考え方の基準を決めた、その基準がまずは正しいかどうかということが第一に今回の対象の意味ではなかろうかという佐藤参考人の話がありましたが、そういったことで、今回の数字の問題についての関係を御理解賜りたいと思います。
○園田(康)委員 事実認定が困難というふうにおっしゃいますけれども、それは全く逆の論理で考えなければいけないんではないでしょうか。つまり、立法事実があって、それに対してどういう形の施策を打っていくのかというのが法律の根幹にあるものだというふうに私は思っています。
したがって、それがないかどうかわからない、調査もしていない、そしてそれに対してこの法律をつくるということに対しては、どうもまだ納得のいくものではないというふうに私は思っております。
したがって、この議論、もう一度宿題にさせていただきたいというふうに思っておりますが、しっかりとその辺の根拠たるものをお示ししていただきたい、そのための時間を、猶予をつくりたいというふうに思っておりますが、また今度の審議までにそれをよろしくお願い申し上げたいというふうに思っております。
次に移ります。
総合的な施策の必要性というものに関して、少し大臣に理念的なところをお伺いしたいというふうに思います。
私ども民主党も、今回のパート労働法の改正をめぐりまして、やはり実際にさまざまな問題があって、そして差別であるとか、あるいはそういう処遇に置かれているという方々を、どのような形でこの格差を是正し、そして一千二百万人を超える非正規雇用の方々に対して手を差し伸べていくかということを総合的に考えていかなければいけないんではないかというふうに思って出発をさせていただきました。
そこで、今回のパート労働者の処遇改善というものを全体的に考えたときに、その処遇だけではなくて、それに伴う、いわば課税最低限の問題ですとか、あるいは家族手当の問題ですとか、そういったところもやはりその根底にある問題であろうというふうに思うわけでございます。したがって、ただ単にパート労働者の処遇改善だけの問題ではなくて、税制であるとかあるいは社会保険制度、そういったものも幅広い形の中で考えていかなければいけないんではないかというふうに思っております。
したがって、かつてのそういう、これが適当な言葉かどうかは少し議論がありますが、主婦パートというような形で、家計の足しにしたい、少しでも楽にしたいというところからスタートしているパートというものも含めて、そういう枠組みというものが社会の構造変化とともに、大臣もおっしゃっておられるように、さまざまな働き方の要素が変わってきている、そういう中で、これからのそういう働き方というものの選択肢というものは、幅広い形でお示しをしていかなければいけないんではないか。
ただ単に、処遇改善というだけの話ではなくて、税制も含めた幅広い形の中で、こういう働き方があるんですよというビジョン、将来的なビジョンというものをやはり大臣の口からお示しをいただきたいなというふうに私は思っているんですが、大臣のその点の御所見はいかがお考えでしょうか。
○柳澤国務大臣 今回のパート労働法の改正につきましては、明らかに、今委員が御指摘のように、働き方の多様化というものが基本にあるわけでございます。
先ほど委員御自身もお触れになりましたように、パートというものが主婦パートで、本当に家計の足しになればいい、補助であればいいというようなことではなくて、やはりいろいろな、多様な働き方の中で、パートというものがその一つとして位置づけられる、働き方の一つなんだというようなことが出てまいりまして、若者や高齢者というものも考えられる、あるいは基幹的な役割をそういう中で担う者も考えられる、こういうような現実がございます。
それからまた、将来の労働力の推移を展望したときには、やはり女性であるとか、あるいは高齢者というような方々について、かなりの労働力率の上昇を期待せざるを得ないということがありまして、そういう中で、このパート労働あるいは非正規雇用というものをどう位置づけていくかという問題も、我々、将来の課題としては当然持っているというふうに考えております。
今回のパート労働法の改正を初めとする労働法制の整備におきましては、これを、どういう働き方をするにしても、できるだけ安心、安全、それからまた納得して働いていただくという環境整備を行うことが大事だということから、今回のような改正を提案申し上げている次第でございます。
しかし、将来展望を考えたときに、ある種の打ちどめというか、これで十分将来展望に対してもこたえていけるのかということであるかと言われれば、やはり将来においてはいろいろなことを考えていかなければならない、このように思っておるわけでございます。
私は、今度、ワークライフバランスであるとか、あるいは政府、内閣の、子どもと家族を応援する日本重点戦略会議向けの厚労省の考え方というものを打ち出すに際しては、やはり働き方と家庭生活あるいは自分の自己啓発というようなこととの間で幾つかのモデルというようなものを提示できないのかということを検討してみたらどうかということを、実は事務方に投げかけているわけでございます。
そういうようなことで、国民がこれからは自分はこういう生き方をする、このモデルというか、そういうものを選択して生きるとしたら自分はどういう職業になるんだろうかというようなことも考えていくということが必要なんじゃないかというふうにも考えておるわけでございまして、まだここで申し上げるのは本当は実に口幅ったいことですけれども、せっかく委員がそういう問題提起をしていただきましたので、私が個人的に今事務当局に投げかけている問題意識というものを申し上げた次第です。
そういうものができてきますと、社会保障制度の対応はどうあるべきか、あるいは税制の対応はどうあるべきかということが当然そこから幾つかのタイプ別に出てくるのではないか。そういうような非常にいろいろな多様な生き方、価値観に基づいた働き方というものが出ておりますから、そういったことまで考えていく状況になっているのかなというのが私の現段階での考え方でございます。
○園田(康)委員 したがいまして、今回のいわゆるパート労働法の改正案というものは、つけ焼き刃的な部分がやはり私は否めないというふうに思っておりますので、大臣が今おっしゃったように、総合的な将来ビジョンというものをしっかり示しつつ、そういう個別の対応というものをやるということになっていくんだろうと思うんです。
したがって、個別的な対応ばかりやって、そういう将来的なビジョンというものがどっちに向いていくのかわからない、あるいはどういうふうになっていくのかわからないというものでは、やはり私は、一つ一つ先ほどのような議論に陥りやすいというふうに思うわけでございます。
したがって、大臣がそういう指示をしたということであるならば、私はそれは評価をさせていただきたいというふうに思っております。したがって、本来ならばそれがきちっと最初にあって、そこから一つ一つの個別的な問題へと取り組んでいくんだろうというふうに思っておりますので、ぜひその考え方というものは共有をしていただきたいなと思っております。
そして、そういう形の中で今現実に、パートあるいはアルバイト、フリーター、ニート、あるいはさらに労働契約であるとか嘱託社員であるとか、そういう形がふえてきているわけであります。したがって、今、総労働者の中の大体三割がそういう非正規雇用だというふうに言われておるわけでありますけれども、それが今後ふえていくということは私は望ましい姿ではないというふうに、それがいろいろな働き方があって結果においてそうなっていくというものであるならば、それはいたし方ないのかもしれません、職業選択の自由あるいは人格形成権というものが個人的にあるわけでありますので。
しかしながら、今の現状をひもといていくと、決して望んでパートやアルバイトあるいは契約社員というものになっているというふうには私には映っていない。したがって、それを是正しつつ対策を行っていかなければいけないわけですが、これが三割から四割へとどんどんふえていくということが望ましいのではないのかなというふうに私は思っております。
したがって、そういう観点の中から、今回政府案が提出されているパート労働法の改正がどういう歯どめというものになっているのかということを、やはり大臣からもう一つ踏み込んで、先ほどのお示しになったビジョンとともに御所見をお伺いしたいというふうに思うんですが、いかがでしょうか。
○柳澤国務大臣 今委員が仰せのとおり、非正規雇用というものが非常に多くなっているわけですけれども、私どもは、これはやはり、企業がグローバリゼーションの中で非常に経営の構造あるいは経済の構造に対応していくという面があったことは否めない、しかし他方、労働者の側にも、いろいろな自分の選択からそうしたものを選びたい、こういうことで、両者のニーズがあってこうした状況が出現しているということは事実であろう、このように思います。
そうした中で、私どもが今度パート労働法で考えていることは、まず、パート労働をなさっている労働者の皆さん方がみずから選んでパート労働をしている場合には、これは処遇を均衡化させていくということをしなければいけない。それから、そうではなくて、望まずしてやむを得ず、実は正社員として働きたいんだけれどもとりあえずこういうことでやらざるを得ないというような方々については、これはできるだけ正社員の方に移行していただく、そういう措置が必要だろう、こういうように考えておりまして、パート労働法の今回の改正にはその両面を盛り込ませていただいたということでございます。
そういう意味合いでは、今回のパート労働法の改正というのは、今委員からは厳しく、その場の対応というような御指摘をいただいたのでございますが、現実に立ってみて事態を一歩でも二歩でも前進させていくということの中では非常に重要な歩みである、こういうようにぜひ御理解を賜りたい、このように考えている次第であります。
○園田(康)委員 問題は、やはり、それぞれの個人が考える働き方というものに今の制度が合っているかどうかというところに焦点を当ててやっていかなければいけないというふうに思うわけであります。
その際に、私ども民主党は、きょうはちょっと答弁席にお願いをしていなかったものですから、先般質疑の中でも明らかになっておりますけれども、民主党の考え方をお示しさせていただいたように、個別の企業の中でそういう検討会をつくって、そしてその中で物差しをきちっとまずはつくっていくというところも一歩踏み込んで考えられるのではないかなというふうに思っているわけですね。これは厚生労働省の中にも、平成十二年ですか、以前にその物差しづくりというものを検討していたという事例を私も伺っているわけであります。
同一価値労働同一処遇の原則について、それを確かに今の日本の雇用システムの中できちっと当てはめていくんだ、すぐさま当てはめていくというのはやはり少し難しいのかなという部分は私も思っておりますが、だけれども、これを理念的に捨ててはならない。これを最終的な目標としてそこに近づけていく、どういうステップで近づけていくのかということを少し踏み込んで考えていただきたいというふうに思っておるわけであります。
そこで、その中において、例えばパート労働の職種内容といいますか、そういったものであるとか時間であるとか、あるいは処遇の内容的なものを、職務分析という形で、その中一つ一つにおいて、そういった手法を用いてケース・バイ・ケースで判断していくというものもあわせて行うことがそれぞれの中で可能ではないのかなというふうに私は思っているんですが、そういう観点にのっとって私ども民主党は提案をさせていただいたというところがあったんですが、その点についてはどのようにお考えでしょうか。
○大谷政府参考人 お答え申し上げます。
御指摘ありましたように、そういった方向については政府内部でもかねてから検討しておった経緯もあるところでございます。また、現状におきましても、先進的な雇用管理を進めている企業におきまして、いわゆる今御指摘の職務分析により職務を評価し、そういったものを実務に生かしておられるという例があるということも聞いているところでございます。このような事例は、正規雇用それから非正規雇用との間で働き方の評価の基準を公正かつ中立的なものとしていくためには、これは望ましいものというふうに考えるところであります。
職務分析の手法がいまだ国内で確立されているとは言えないという現状において、今回法律で強制するということはとれなかったわけでありますけれども、今後、そういう先進的なこういう雇用管理の事例につきまして我々も勉強し、また、できるだけそういったものがあることについて情報提供を進めるということで、そういったものの普及促進を考えたいと思っております。
○園田(康)委員 私どもはしっかりとそれをやりたい、やっていきたいというふうに明示をさせていただいておりますけれども、大臣、ぜひ、これは民主党案が成立することを私は望んでおりますが、仮に政府案が成立をした際に、法施行後三年の見直しという規定が入っておるように見受けました。
したがって、法施行後、今回は法律の中に職務分析等のそういったものはできなかったという今局長答弁でありましたけれども、ぜひ、三年後の見直しに向けて、そういう検討の場、物差し研究会なるものをしっかりと厚生労働省内に設けて、そこでしっかりと取り組んでいくというお考えは、大臣、今の局長答弁も踏まえて、お考えにあるかどうか、御答弁をお願いしたいと思っております。
○柳澤国務大臣 先ほど委員も御指摘のとおり、厚生労働省内におきましても、いわゆる物差しということで、実質的な均衡を図るための手法というものが見つからないかということで検討はしてきたわけでございますけれども、結局、今回は、それについて労使の合意が得られるような形での手法というものはなかなか見つけ出し得なかったということでございます。
そういうことではありますけれども、均衡処遇の要請というものにはこれはこたえていかなければならないということで、今回のような均衡処遇のための措置を事業主に課すという法体系のもとで、この目的とするところを実現しようという手法をとったということでございます。当面は、事業主の取り組み状況等、私どもの今回の改正後の制度がどのような定着ぶりを見せていくかということについて、その状況を見守っていくということでございます。
しかしながら、もし見直しが必要だというようなことの場合には、そのときの状況もよくにらみながら、今委員が言われたようなことというものも念頭に置いて見直しが行われるということにはなろうと思いますけれども、今この場で私どもが申し上げられることは、とにかく今度の改正がどのような定着ぶりを示していくかということをまず見守っていきたい、こういうことでございます。
○園田(康)委員 ぜひ、改めてまた検討の場というものを設けていただきたいというふうに強くお願いを申し上げておきたいというふうに思っております。これは、民主党案、政府案、どちらが成立しても同じ結論が出るのかなというふうに思っております。
そして、公正な賃金の改定、決定について、先ほど局長も、さまざまな企業間の中でそういった職務分析の手法は取り入れてやっていらっしゃるという御答弁もいただいたわけでありますけれども、それをさらに共通の業界の中でやっていくという動きがあるというふうに聞いております。例えば流通業のデパートですとか、そういった流通業の中でも、一つの企業だけではなくてそれぞれの業界の中でそれに対してしっかりと取り組んでいくというようなお話が今あるわけであります。
私としては、そういった取り組みをパート労働法の改正とともにしっかりと政府として支援していくということが考えられるのではないのかなというふうに思っておるんですが、政府として、そういう業界団体あるいは業界でそういう取り組みをしている、そのことに対する具体的な支援策というものは何か考えていらっしゃるんでしょうか。
○大谷政府参考人 今御指摘ありましたように、一つの業界の中で共通の物差しづくりに向けた取り組みがなされていくということは、正規雇用、非正規雇用との間で働き方の評価の基準を公正かつ中立的なものとしていくためには、これは望ましいというふうに考えております。
したがいまして、政府といたしましては、このような取り組みを支援するために、この法律改正案において事業主団体向けの助成金を創設することとしておりますが、そこで、正社員と共通の評価や資格制度、いわゆる賃金制度の導入等に係る傘下の企業支援を行った、こういった事業主団体に対して助成を行うということも準備しておるところでございます。
○園田(康)委員 それでいきますと、本年度の予算案の中で、いわゆる短時間労働者均衡処遇推進助成金というものであろうというふうに伺っておるわけでありますが、ここでいきますと、まず、中小企業事業主団体向けというものと、さらに団体向けだけではなくて事業主向けにもあるというふうに聞いているわけでございます。
そこで、まず、国が行う、団体ではなくて事業主に行うものとして必要な措置を講ずるというものはどういったものになっていくんでしょうか。
○大谷政府参考人 短時間労働者均衡処遇推進助成金ということで今お話しの制度がございまして、さきに申しました事業主団体以外に、個々の事業主に対しましても支援するという助成金を現在準備しているところでございます。
具体的には、例えば、正社員との均衡を考慮した賃金制度を設けた事業主に対しまして実績に応じて三十万から五十万円、また正社員転換制度を設けた事業主に対して実績に応じて三十万円、さらに正社員との均衡を考慮した教育訓練制度を設けた場合に実績に応じて三十万円、こういったものが例示でありますが、こういった個別事業主に対する支援も現在準備しておるところでございます。
○園田(康)委員 その際に、正社員との均衡を考慮した評価資格制度というものが設けられて、三十万から五十万円ということでありますけれども、この評価資格制度というものはどういったものを設置すればよろしいんでしょうか。具体的にお答えをいただきたいと思います。
○大谷政府参考人 ここで言う評価資格制度とは、具体的に言いますと賃金制度のことになろうと思います。
○園田(康)委員 それから、正社員への転換において、この場合は、通常の労働者への転換を推進するために短時間労働者について三つの措置が講じられるというふうになっておりますが、そのうち、まず、通常の労働者の募集を行う場合の周知というふうになっているわけですが、この周知というものはどういう形で行われるものと理解をしてよろしいんでしょうか。
○大谷政府参考人 通常の労働者への転換を推進するための措置のうちの正社員募集情報の周知でありますが、これは例えば、その事業主に、ふだんから目にする掲示板に掲示する等、パート労働者が現にその募集情報を知ることができるような周知の方法をとらせるということにしておりまして、こういう形で行いたいと考えております。
○園田(康)委員 したがって、パート労働の方々がしっかりと正社員への転換というものの募集を明確に認識するという形でないとまずいけないということでありますので、その辺はしっかりと指導をしていただきたいというふうに思っております。
時間がなくなってまいりましたので、あと、ちょっと順番が変わりますけれども、労働条件に関する文書の交付等、法律の六条の部分でありますけれども、労働基準法の第十五条、ここにおいては、もう御案内のとおり、労働契約の期間であるとか就業の場所であるとか従事すべき業務、あるいは始業、終業の時刻、残業の有無、休憩時間、休日、休暇等、そして賃金の決定、計算、支払いの方法、退職というふうに、これを文書として交付をしなければならないというふうになっているわけでありますが、今回、このパート労働法においても、特定事項というふうに明記をしているわけでありますが、これは何を示し、そしてさらに、パート指針において、安全衛生であるとか、あるいは教育訓練、休職、これについては努力義務というふうになっておりますけれども、どうしてこれが努力義務という形になったのか、その経緯をお示しください。
○大谷政府参考人 改正法案の第六条に定めます特定事項につきましては、昨年末にいただきました労働政策審議会の建議において、昇給の有無、それから賞与の有無、それから退職金の有無、この三つとするというふうにされております。この三つが改正法案では雇い入れ通知書における記載義務事項とされたわけでありますが、その考え方は、その待遇の中でも特に重要な賃金に関する事項である、またパート労働者にあるかどうかが現状まちまちでありまして、事後のトラブルにもなりやすい、こういったことから、この三つが審議会でもいわゆる義務的な記載の事項にされたというところであります。
この三つのほか、労働基準法にありますような規定、安全衛生や教育訓練、休職についての規定でありますが、現在でもこれは指針に定められているところでありますけれども、さっき申しましたような、パート労働者であるというような現状なり、そういった理由で事業主に特段の措置を法律で義務づけるということには至らないということで、今回は先ほどの三点が法律事項として浮上し、委員が言ったようなものは引き続き指針等で確保を図っていくというふうになったところでございます。
○園田(康)委員 ぜひこの点もしっかりと盛り込んでいけるように努力をしていただきたいと思います。
さらに、パート労働者を雇い入れる期間についての雇い入れ通知書、これに関して、雇用期間の有無の明示でありますけれども、これはどのような趣旨で盛り込まれるようになったのか。そして、例えば三カ月なら三カ月という形で雇い入れをしましょう、あるいは六カ月なら六カ月というふうに雇い入れをしましょうというふうに明示をするわけでありますけれども、なぜ三カ月であるのか、なぜ六カ月であるのか、なぜ一年であるのかという理由までやはりこの通知書の中に盛り込んで、きちっとパート労働の方々に明示をするべきものではないのかなというふうに私は思っているんですが、この辺の理由というものまで付記する、明示するということに関して、どのようにお考えでしょうか。
○大谷政府参考人 このパート労働法の趣旨は、労働の時間が短い、短時間性に起因する問題に着目しまして、必要な労働者保護を図る、こういう法体系で整理したところでございます。
御指摘のいわゆる雇用期間について、例えばその有無だけでなくて、期間の理由を示す、こういったことについてでありますけれども、これは契約のいわゆる有期性というものに伴う考え方でありますが、この問題は、いわばパート労働者であるかどうかにとどまらず、これはフルタイムの契約社員を含めて、一般的な検討課題というふうに考えておりまして、このパート労働法の中でその理由まで掲げるということには至らなかったというところでございます。
○園田(康)委員 これは、おっしゃるとおり、全体的な問題ではありますけれども、とりわけ今回のパート労働に関しては、有期という限定が課せられるわけであります。したがって、なぜあなたは三カ月であったのか、あるいは半年であるのかということはきちっと明示するように私は努力をするべきであろうというふうに思いますし、そういう形で理由を示されれば、働き手側からすれば、将来予見性というものもそこの中で生じてくるであろうというふうに思っておりますので、ぜひ前向きにこの点は検討をお願いしたいというふうに思っております。
まだ幾つか質問事項を用意しておりましたけれども、時間が参りましたので、まだまだ少し疑問点もありますし、さらに先ほどの一番最初の宿題等もございますので、その点も踏まえて、今後の議論に付したいというふうに思っております。
時間が参りましたので、以上で質問を終わります。
○櫻田委員長 午前十時四十分から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。
午前九時四十六分休憩
――――◇―――――
午前十時四十一分開議
○櫻田委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
質疑を続行いたします。西村智奈美君。
○西村(智)委員 民主党の西村智奈美でございます。
今回、パート労働法が一九九三年の施行以降、大変大幅な見直しということで、私たちも期待をしておりました。これまで、審議会建議、そして法案要綱、法案と出てまいりましたものを見て、多くのパート労働者の方々が抱いていた希望は、むしろ、どちらかというと失望に変わったというふうに思います。
今、日本の労働市場というのは激変をしておりまして、その中でも多くの矛盾点、問題点をいわばこのパート労働の分野が抱え込まされている。そうした中で、本当に多くの働いている人たちは、やはり不合理な差別や不当な差別によって苦しんできたという実態があります。これは多くの事例もありますし、幾つかの裁判例もありますし、大臣もよく御承知のことでありますので、改めて申し上げるまでもありません。
しかし、こういった実態をどう解決していくのか、解消していくのか、そして、すべての人に働きに見合った処遇を確保するためにどうするかというのが、今回のパート労働法の改正の立法趣旨でなければならなかったと思っております。しかし、これは大変不十分なことがいろいろある。
私たち民主党からは、今回、いわば対案という形でお示しをいたしました。すべてのパート労働者に均等待遇を義務づけるということ、そしてまた、新しい職場でのいわばルールづくり、物差しづくりを目指すという点で、事業所内の均等待遇等検討委員会というものを設置している。これは多くの有識者の皆さんから、今、大変高く御評価をいただいているところでありまして、ぜひこの法案を成立させていただいて、そして、次の時代に向けた新しいワークルールづくり、これに踏み出していきたいと思うところでございます。
きょうは、私、民主党案に質問するわけにはまいりませんので、政府案に対して幾つか質問していきたいというふうに考えております。
今回の政府案の一番大きな問題点は、通常の労働者とパート労働者のいわゆる均衡処遇というものを見ていくときに、その比較の対象となるところが極めて限定的で、パート労働者のうち本当に差別禁止の対象になるパート労働者というのは極めて限られるのではないか、そしてまた、今、実態は、通常の労働者といえども極めて長時間労働なり過重な労働が強いられているという実態にありますので、一体どの通常の労働者とどのパート労働者を比較するかということが、やはり大変大きな問題なんだろうと思っております。
そういう点からまず質問させていただきたいと思うんですけれども、一体だれとだれを比較するのか。通常の労働者の働き方も一律ではありません。これは、先日内山委員が質問されていたことでありますけれども、つけ加えてということで質問していきたいと思いますが、まず第一点目は、所定労働時間が週三十五時間の労働者、これは、このパート労働法で言うところの通常の労働者にもなり得るし、また短時間労働者にもなり得るということだと思うんですけれども、一体どういう要件を満たせば通常の労働者となるのでしょうか。恐らく通達だということなんでしょうが、しかし、通達の中には三十五時間という数字などはどこにも書いていないわけですね。いかがでしょうか。
○大谷政府参考人 お答え申し上げます。
この法律で考えております通常の労働者とは、いわゆる正規型の労働者を言い、具体的には、社会通念に従い、フルタイム勤務の者について、当該労働者の雇用形態が期間の定めのない契約であるかどうか、それから待遇、その中身としては、長期雇用を前提とした待遇がなされているかどうか、こういったものを総合的に勘案して判断するということにしているわけでございます。
今御指摘のありました週の所定労働時間が三十五時間という方でありますが、この方につきまして、今申しましたような要件を満たせば、これは通常の労働者ということで判断されるものというふうに考えております。
○西村(智)委員 別の聞き方をいたしますけれども、それでは、通常の労働者の中には、いわゆる短時間正社員も含むというふうに考えてよろしいのでしょうか。
○大谷政府参考人 通常の労働者につきましての概念、先ほど申し上げましたところでありますが、今お話のありましたいわゆる短時間正社員でありますけれども、この方につきましても、雇用の要件を満たせば通常の労働者として判断されることになるわけでありますが、ほかにフルタイムの通常の労働者がいる中で、例えば極めて短い労働時間勤務の短時間正社員という方がおられた場合については、これはいわゆる正規型のフルタイム労働者と判断される可能性は低いのではないかということで、個別の事情により判断する要素があると考えております。
○西村(智)委員 雇用期間の定めのない契約を結んでいる労働者は、今のパート労働者の中で一定の比率を占めております。どういう要件を満たせば、こういう労働者が通常の労働者となるのでしょうか。長期雇用を前提とした処遇となっているかどうかが判断基準となるのか、伺います。
○大谷政府参考人 通常の労働者の考え方は、冒頭申し上げたとおりでございます。このケースの考え方でありますけれども、パート労働者と一般に言われている方の中で、期間の定めのない方があるわけでございまして、こういった方々につきましても、冒頭申し上げました通常の労働者という要件を満たせば、この法律上の通常の労働者として判断されるということはあり得ると考えております。
○西村(智)委員 それでは次に移りますけれども、既に正社員と同じ処遇制度が適用されている短時間労働者も存在いたしております。こういった短時間労働者はどういう要件を満たせば通常の労働者ということになるのでしょうか。これは雇用期間の実態で判断するのかどうか、お伺いいたします。
○大谷政府参考人 このケースでありますが、例えば、正社員と同じ処遇制度が適用されているということになるわけでありますけれども、この方については、一般にパートというふうに呼ばれている方が多いわけであります。これらにつきましても、先ほどのケースと同じでありますけれども、通常の労働者、いわゆる正規型の労働者がいるということ、それから、フルタイム勤務の者でその雇用形態や待遇を総合的に勘案して判断するということについては、これも同じ考え方でありまして、その要件を満たせば、これは通常の労働者として判断されることになるというふうに考えております。
○西村(智)委員 同じ職場に週四十時間の正社員と週三十五時間の正社員がいる場合に、短時間労働者の差別禁止あるいは均衡待遇の比較対象は、その両者を含むと考えてよろしいでしょうか。つまり、週三十五時間の正社員との比較もあり得るという理解でよろしいでしょうか。
○大谷政府参考人 先ほど御答弁申し上げましたとおり、週三十五時間の正社員という方もおられるわけであります。そういう方については通常の労働者と判断される場合がありますので、その場合は、今回の改正法の適用において、比較対象としては、いわゆる短時間労働者と通常の労働者との比較対象になり得ると考えております。
○西村(智)委員 転換制度が今回あるわけでありますけれども、同じ職場の中で通常の労働者への転換という場合に、週三十五時間の通常労働者への転換も含むというふうに考えてよろしいでしょうか。
○大谷政府参考人 週三十五時間の正社員のケースでありますけれども、先ほど申しましたような考え方でこの方が通常の労働者というふうに判断される場合につきましては、そういう形への転換の推進策を講じるということは、これは改正法案上のいわゆる転換の義務を履行したことになると考えます。
○西村(智)委員 今のお伺いの中で、実態で判断するという一連の御答弁でありました。つまり、事業所側の主観ではなくて実態で判断するというのは、非常に重要なポイントであろうというふうに考えております。
それで、だれとだれを比較するかという項目でいいますと、最後の項目でありますけれども、今は週三十五時間の正社員というのは存在いたしませんが、新たにそうした枠組みをつくることも当然含まれると考えますが、いかがでしょうか。
○大谷政府参考人 個々の事業所におきまして、週三十五時間の正社員、こういう新たな枠組みを設けられるという場合につきましては、その新たな正社員が通常の労働者と判断される場合については、その形への転換というものも今回の推進の中に含まれているということでございます。
○西村(智)委員 続きまして、次の項目に移りたいと思います。
今回、法律の中では、第八条「通常の労働者と同視すべき短時間労働者に対する差別的取扱いの禁止」、ここが大きな争点になるだろうと思っております。いろいろな分析をいたしておりますし、これまでの答弁もあるんですけれども、やはりまだまだ懸念というのは消え去らない。今までのパート労働者の置かれていた実態というのは、非常に厳しいものだったというふうに思っております。
つまり、事業主が、一つの事業所の中で、通常の労働者、普通に働くいわゆる正規型、典型型の労働者と、それからパート労働者の人たちがいたときに、この人には、例えば長期的なキャリア形成を考えているのでこういうコース別の管理をします、パートの人たちに対しては、そういった長期的な人材活用は考えていないからこういうコースですということで、まず入り口で、コース別雇用管理で分けられるということが大変多かったわけですね。
ですので、昨年の男女雇用機会均等法の改正のときに私たちが主張してきたのは一つはこの点でありまして、やはり性差別、間接差別という法理とあわせて、このパート労働法も一緒に見直しをしていかないと、実際にパート労働者の抱えている様々な問題というのは解消できないということで、昨年の均等法改正のときに、私たちはパート労働法の改正案も一緒に出したわけでありますけれども、政府の方では、パートの問題に対する認識というのがやはり薄いのではないかなというふうにずうっと拝見をしておりました。
今回出てきた法案においても、やはり今実際にパート労働が抱えている問題への対策というのは極めて弱い。これで本当にパート労働の抱える問題が解消できるのか。この第八条の中で三要件をつけたことによって、むしろ、パート労働者の中でもさらに格差が広がっていくし、通常の労働者との間でもますます格差が広がっていく、そういうことが懸念をされているわけであります。そこのところをしっかりと皆さんは見ているのか。
大臣の答弁もこの間ずっと伺ってまいりましたけれども、非常に高邁な、高尚な議論になってしまって、先日の小宮山委員との議論、私は正直言ってついていけないところがありましたが、きょうは、大臣に御答弁をいただく前に、政府参考人とこの第八条についてしっかりと議論をしたいというふうに考えております。
まず、第八条、異動の範囲についてでありますけれども、昨日参考人質疑がありました。その中で佐藤参考人が指摘をされております。パートタイマーが働いている職場に正社員が配属されてきた、こういう場合に、その正社員は、キャリア形成を前提としたいわゆるジョブローテーション、この一環として配属されてきたのであって、同じ職場にいても、そうしたジョブローテーションが想定されていないパート労働者とは処遇が異なっても当然だ。こういうことはあり得ることだというふうに思っています。
しかし、これもきのうの参考人の御意見、中野参考人の御意見の中にありましたけれども、正社員のすべてがそういうジョブローテーションをしているとは限りません。中には、一定の部署を受け持つ範囲だけで異動している、そういう人たちもいるはずだと思うんですね。あるいは、実態や職場の慣行から見て、異動の範囲がおのずから限定されているという人もいるはずであります。
つまり、質問はこうです。正社員の中でも幾つかの区分けがあるという場合には、パート労働者の異動の実態から見て、同じ区分けになる人同士を比較するということになる、そういう理解でよろしいのでしょうか。
○大谷政府参考人 改正法案の第八条の差別的取り扱いの禁止、それから第九条第二項の均衡待遇において比較の対象となる通常の労働者は、職務内容が同一であることと、それから、今お話がありました人材活用の仕組み、いわゆる異動の範囲を含めてですが、そういうものが同じであること、この両方が最低限必要なわけでありますが、御指摘の人材活用の仕組みにつきましては、職務内容が同一であるという正社員について比較対象として見るということでございます。
○西村(智)委員 では、別の聞き方をいたしますけれども、異動の範囲について、それは単なる取り決めではなくて実態でということであれば、きちんとした実態を伴うものでなければならないというふうに考えますが、この点についてはいかがでしょうか。
○大谷政府参考人 改正法案の第八条それから第九条第二項において規定しております職務の内容及び配置の変更の範囲につきましては、当該事業所における慣行その他の事情から見るということとされております。
したがいまして、単なる取り決めが慣行とは異なっているというような場合もあり得るかというふうに考えますので、これは、そういった規定ぶり、それからその職場の慣行、双方で見て実態判断するということになると考えます。
○西村(智)委員 その職場の慣行などというものが、やはり往々にして使用者の主観的な思いであるということは、これはあると思うんですね。例えば、このパート労働者について長期的な人材活用を予定しているか予定していないかと聞かれたときに、予定していますというふうに答える使用者は、それはなかなかいないと思うんですよ。
この条文、八条の中で、いわゆる「見込まれるもの」というふうにありますけれども、ここの部分です。ここの部分は、私は、正直言って削除すべきではないか、政府案の中でも非常に問題の多いところでありますので、最低限ここは削除して出すべきではなかったかというふうに思います。
まずその点について伺いつつ、また、その見込まれるということでありますけれども、入っているということでお伺いをするんですが、単なる予定ですとか、そういった予定や使用者の主観的な思いであってはならないというふうに考えています。職場の慣行を含めて、客観的な事情によって明らかになるものだというふうにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。
○大谷政府参考人 今お話しになりました職場における事業主のいわゆる主観みたいな問題をどう考えるかということでありますけれども、ここで考えておりますのは、そういった単なる予定とかそれから事業主の主観ということではなくて、それは規定や慣行というものを客観的に見て判断していくというふうになると考えております。
それから、見込まれるということの考え方につきましては、後ほど御議論があるかもしれませんけれども、どの時点で判断するかということでこれは必要な規定だというふうに考えておりますけれども、それは単に主観のことを言っているわけではないというふうに思います。
○西村(智)委員 その見込まれるというところは、結局、この前、小宮山委員の質問にもありまして、どの時点からというような議論ともかかわってくることだとは思うんですけれども、私は、これはまさに法案が骨抜きにされるおそれのある、極めて重大な文言だというふうに考えております。
続いてなんですけれども、異動について、単なる形式的な異動、先ほど申し上げたような、単に機械的なジョブローテーションということではなくて、職務との合理的な関連性が必ずこれは要件になるべきだというふうに考えますけれども、いかがでしょうか。
○大谷政府参考人 異動の中身でありますけれども、これは、法文上は、当該事業所における慣行その他の事情から見るということになるわけでありますが、その異動の範囲が合理的かどうかということであります。これは正社員も含めて、職場における人事異動がどうなっているかという、むしろ比較する対象との関係で、実態によって判断していくものであろうというふうにこのパート法の中では考えるわけであります。
しかしながら、合理性云々につきましては、当該の人事異動の内容が、例えば転勤であって、それが先ほどもお話しになりましたような、昨年も議論がありましたけれども、男女雇用機会均等法の中で男女間の間接差別とみなされるような場合にありましては、これは男女雇用機会均等法による規制の対象となっていくかというふうに整理して考えております。
○西村(智)委員 均等法ではよろしいんですけれども、それでは今回のパート労働法では、職務との合理的な関連性は要件にされていないという理解ですか。
○大谷政府参考人 職場の実態として行われている異動というものを対象の尺度にするということだと思います。
○西村(智)委員 そこが、非常に法律のいろいろなところにまたがって、結局、いろいろなところで穴に落ちてしまう危険性のあるところなんだろうと思います。そこは、やはり性差別という視点をしっかりとここに含めて考える必要があるということからいたしますと、不十分な答弁だったかなというふうには考えております。
それで、ちょっと具体的に異動の範囲について伺っていきたいのですけれども、具体的な事例を申し上げますので、それに即してお答えいただければと思います。
あるパート労働者、週四日勤務で働いているのですが、そこでは、正社員は、就業規則において異動ありの規定の適用がある、こういうふうにされております。しかし、正社員でも部門によっては異動が全くないところもあれば、異動はあってもせいぜい三〇%前後の社員が経験をするだけで、残りは異動しないまま定年まで勤務をしております。それであるのに、週四日勤務であるパート労働者は日給制で、金額にも開きがあって、その他の労働条件にも格差が生じているというケース、こういうときに、異動の範囲は実態で判断するのでしょうか。あるいは規定の適用で判断するのでしょうか。
○大谷政府参考人 この改正法案の第八条や第九条第二項におきまして規定しております職務の内容及び配置の変更の範囲につきましては、先ほど答弁申し上げましたとおりに、規定と慣行の双方から判断するということになるわけでありますが、今御指摘のケースについて、実際に異動しておられない正社員がいたといたしましても、集団として異動しているという実態があれば、それを勘案するというふうに考えます。
○西村(智)委員 何と、本当にそれでいいんですか、集団として実態があればと。ここはちょっとやはりおかしいんじゃないかと思います。異動の範囲は実態で判断する、規定の適用、両方だということであればまだ、ちょっと理解できないんですが。
ほかにもありますので続けて伺います。では、単なる予定にすぎない異動や社員としての位置づけ、例えば将来の幹部候補などということ、それによって、今回、改正パート労働法の八条の適用、これが決せられるということになるのでしょうか。
○大谷政府参考人 繰り返しになる部分もありますけれども、