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記事のトップ > 資料庫パートタイム労働法国会審議 参議院 議事録抜粋 2007年5月22日
第166回国会 厚生労働委員会 第21号
平成十九年五月二十二日(火曜日)
午前十時四分開会
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委員の異動
五月十八日
辞任 補欠選任
広中和歌子君 山本 孝史君
澤 雄二君 山本 保君
五月二十一日
辞任 補欠選任
櫻井 充君 千葉 景子君
山本 孝史君 富岡由紀夫君
山本 保君 西田 実仁君
五月二十二日
辞任 補欠選任
西島 英利君 山本 順三君
千葉 景子君 櫻井 充君
西田 実仁君 澤 雄二君
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○短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律
の一部を改正する法律案(内閣提出、衆議院送
付)
前略
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○委員長(鶴保庸介君) 政府参考人の出席要求に関する件についてお諮りいたします。
短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会に、理事会協議のとおり、厚生労働省雇用均等・児童家庭局長大谷泰夫君外十名の政府参考人の出席を求め、その説明を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。
〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
○委員長(鶴保庸介君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。
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○委員長(鶴保庸介君) 短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律の一部を改正する法律案を議題とし、質疑を行います。
質疑のある方は順次御発言願います。
○柳澤光美君 おはようございます。民主党・新緑風会の柳澤光美でございます。
前回は柳澤大臣に、今後の我が国の雇用政策の進むべき方向、具体的にはどうした雇用形態で、またどのような働き方を目指すのかということを中心に、現状の問題点を踏まえて質問させていただきました。大臣からは、アメリカでも、いっとき喧伝された職業を渡り歩くキャリアホッピングから、長く一つの会社にとどまって自分の技能を磨きキャリアアップを図るようになってきているというお話をされた上で、やはり基本的には安定した職場に長期にわたっているという形を基本に置くべきだと。また、長期安定的な雇用の場というのは、希望する人には絶対確保するという基本を私は揺るがせるべきではないと考えているという大変率直な、私にとっては力強い御答弁をいただきました。私自身の考え方と大臣の考え方という意味では同じ考えが共有できるということで、大変うれしく思います。
それを受けて今日は、もう大分、衆議院、参議院でも議論を尽くされてきているわけですが、パート労働法の改正内容について何点かお伺いをしたいと思います。
当初は、一九九三年の法施行以降の大幅な改正だということで、短時間労働者においても正当な評価がなされる中で、均等・均衡待遇といったものの実現を目指す絶好のチャンスであると私自身も大いに期待を寄せておりました。また、時あたかも安倍総理の言うところの再チャレンジ政策とも相まって、パートの差別禁止、均等待遇など処遇改善につながるものだということが喧伝をされまして、多くのパートの皆さんも心待ちにしていた法改正でした。ところが、どうでしょうか、大ぶろしきを広げた割には実際の中身の荷物はかなり小さくなっている、がっかりしたという現場のパートの皆さんからは落胆の声さえ届いています。
この不満には大きく二つあります。一つは、今回の法改正は、パートの差別禁止についてはかなり限定された一部のパートさんにしか掛かっていないこと、対象が少な過ぎるということです。二つ目は、均衡処遇についても実際のところ実効性の担保という点では懸念される部分が非常に多い、今までとほとんど変わらないのではないか、むしろ悪くなる可能性があるのではないかという声です。
本委員会の質疑においても、まだまだよく分からない点や課題が多く残っているというふうに思います。そこで、何点かの基本的な部分をお伺いしたいと思いますので、できるだけ簡潔な答弁をお願いをしておきたいと思います。
最初に、一番引っ掛かっています、私自身が、フルタイムパートの問題です。本法案の短時間労働者の定義は、通常の労働者より所定労働時間が短いとあります。今回の法改正においては、通常の労働者と同視すべき短時間労働者の差別を禁止していますが、フルタイムパートにおいては法的な根拠が全くなく、今回のパート法の対象になっていません。通常の労働者と所定労働時間が同じフルタイムパートに対しても、差別を禁止していくことを明確にすべきだというふうに考えます。
そこで、お伺いしたいのですが、最初に再度確認させていただきます。
今回の法案で差別禁止の対象となる通常の労働者と同視すべき短時間労働者は、四%から五%とかいろいろ言われていますが、推計で結構です、何人ぐらいになるのか、人数でお答えいただけますでしょうか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 今回の改正法案におきまして差別的取扱いを禁止するに当たりましては、この対象者の範囲というものを審議会でも相当突っ込んで議論しまして、要件を職務と人材活用の仕組みと契約期間と、この三つに明確化した上で作業を進めたわけでありますけれども、こういった要件の固まったというのがこれ昨年の末に議論の結果固まりましたので、これらの要件に沿った過去の統計というのは存在しておりません。そういうことで、これ具体的に人数等で示すデータがないところでございます。
しかしながら、厚生労働省が把握しておりますデータのうちで先ほど申しましたような要件に合致する推定対象者として最も近いというものが、平成十三年の二十一世紀職業財団の調査でありますけれども、多様な就業形態の在り方に関する調査という、これに基づく数字でありまして、この調査を見ますと、自分が例えば正社員と思うパート、あるいはその正社員から見て自分と同じだと思うパートさんどういう人かというときに、仕事とそれから責任の重さと、残業あるいは休日の出勤あるいは配置転換、転勤の有無、頻度、こういったものを見比べてどうかというふうに聞いた結果として集計しますと、四から五%ぐらいの方々が自分はパートと同視すべきだというふうにそのパートさんそれから通常の労働者、双方がお答えになったわけであります。
全体のその数字でありますけれども、この平成十八年の調査によりますと、パート労働者が千二百五万人ぐらいいるということは、これ週の就業時間数が三十五時間未満の雇用者数を示す数字でありますけれども、これがまたパートタイマーの数と、完全に千二百五万人が全員がパートタイマーとは限りませんけれども、ほぼ一致するものとみなしまして考えた場合には、例えばこの千二百五万人のおよそ四、五%に当たる数字がこの差別的取扱い禁止の対象者であると推計してもよいのではないかというふうに考えております。
○柳澤光美君 私は人数でお聞きしたんですが、これを、じゃ一千二百五万人で四から五%、最大五%だとしても六十万、四%だと四十八万、この審議の中でもっと実態は少ないんじゃないかと、一%ぐらいじゃないかというお話があります。ただ、最大の五%と見積もっても六十万人、一千二百五万人の中で六十万人しか対象にならない。しかも、その方たちがすべて差別禁止になるわけではない、これから一つ一つ進めていく、最大が六十万人だということは私は確認をしておきたいというふうに思います。
二つ目に、それでしたら、フルタイムで働いているパートの皆さんは何人になるのか、人数、推計でも結構ですが、今厚生労働省として把握しているか、教えてください。
○政府参考人(大谷泰夫君) フルタイムパートという言葉でありますけれども、平成十五年の就業形態の多様化に関する総合実態調査によりますと、正社員と一日の所定労働時間と一週間の所定労働日数がほぼ同じで、パートタイム労働者その他これに類する名称で呼ばれる者ということで調べました数字が百三万一千人となっております。
○柳澤光美君 百万人を超えている。で、このフルタイムパートの問題というのを私は先に解決すべきじゃないかと、順番が逆じゃないかというふうに強く感じています。
いろいろ御答弁聞いているんですが、とすれば、今回の法の目的は何なのか。一つは、雇用形態によってある差別をなくす、しかも、なくした上で均等待遇を取る、その上でできるだけ正社員に転換をさせていくということが二大目標だというふうに私は思っています。
ところが、今回の法案から、一番働いているフルタイムパートの皆さんは外れてしまう。この人たちの差別禁止を厚生労働省としてどうしようとされているのか、簡潔にお答えいただけますか。
○政府参考人(青木豊君) 今委員御指摘になりましたフルタイムパートについてでありますが、フルタイムパートである有期労働者につきましては、今般、御審議をお願いしております労働契約法を、案を作成する段階で労働政策審議会で御議論をいただきました。そこでは、有期契約労働者全般と無期契約労働者との間の均衡を含めた、雇用の実態に応じた労働条件についての均衡の考慮という形で審議は行われました。その際には、労働者代表委員から、就業形態の多様化に対応し、適正な労働条件を確保するため、均等待遇原則を労働契約法制に位置付けるべきだという意見が出され、使用者側の使用者代表委員からは、具体的にどのような労働者についていかなる考慮が求められるのか不明だということで、労働契約法制に位置付けるべきではないという意見がございました。議論の結果、コンセンサスを得ることができませんでした。これを踏まえまして、労働政策審議会においては、労働者の多様な実態に留意しつつ必要な調査等を行うことを含めて、引き続き検討することが適当であるという答申をいただきました。
この答申を踏まえまして、私どもとしては今後検討を進めていきたいというふうに思っております。
○柳澤光美君 私、三年前に初当選さしてもらって厚生労働委員会に入れていただいて、厚生省と労働省が一緒になって大変範囲が広くなる、ただ一方で、旧厚生部門と労働部門がむしろ一緒になることによって共有をして問題解決を進めるといういい点があると思いますというお話をさしてもらいました。それが、労働分野においても結局、局単位で動いていて、全部法案がそれぞれ別で、審議会も別ですと。で、根幹の部分で日本の雇用政策をどうしていくんだと。
そこで、ちょっとお伺いしたいんですが、均衡待遇にそれはもちろん一番すべき方ですよね、フルタイムで働いている方というのは。で、短時間に関して言えば、確かに過去は主婦のパートさんあるいは学生バイトさん、今後は恐らく高齢者で働かれる方、この皆さんは自ら短時間を選んで決まった時間で働きたいと。ところが、ここへ来て増えているのは、むしろ短時間勤務や有期雇用ではなくて、フルタイムで働ける基幹パートであったり新卒パートであったり世帯主パートであったりするわけです。先回その数字もお話をしました。この皆さんというのは、できるだけ正社員の方に転換をしていきたい。とすれば、一番大事なのは、このフルパートで働いていて社員の皆さんに負けないように働けると、正規社員に、この人たちをむしろ率先して転換させるべきだというふうに思いますが、厚生労働省としてはどう考えられていますか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 今御質問もあり、また労働基準局長からお答えしましたとおり、このフルタイムと呼ばれているこのパートの労働者について、その待遇、処遇について今後引き続き検討し改善を図っていかなければならないというわけでありますが、法律の規定ぶりにつきまして申し上げますと、今回の提案申し上げました法案は、今お話のありましたように、労働時間が短いということに着目していろいろな待遇の不均衡あるいは差別等があることについて、それをどう改善していくかという法律でありまして、そういう意味で、この法案の中では、そのフルタイムパートについて、例えば正社員への優先的な転換等について規定することはできなかったわけでありますけれども、ただ、先生の、この法案の歴史、あるいは今おっしゃいましたように、元々短時間の働く方が多かった、しかし今はもう基幹的なところでフルタイムで働きたいという、だんだんその接点といいますか境界線が非常に接近しているわけでありますけれども、今回のこういった均衡処遇の考え方、あるいは正社員への転換というこの考え方につきましては、この法案を提案する立場からは、そうした考え方が極力そういった場で生かされるということを期待しているわけであります。
○柳澤光美君 そういった場でということではなくて、それは厚生労働省として、日本の厚生労働行政として進めるべきであって、私は是非お願いしたいのは、目的と手段があります。目的は何なんだということをきちんと押さえておかないと、手段が目的になってしまう。法案はあくまでも手段なんですね。そうですよね。
で、冒頭言いましたように、大臣もできるだけ長期雇用で働きたいという皆さんをできるだけそういう転換をさせていきたいと。だからこそ、短時間であっても転換をさせる。私は、是非、この法案には難しいとしても、それが政省令になるのか分かりませんが、どこかにそのことをきちんと明記をした上で周知をしていくということが大切だというふうに思いますが、厚生労働省の見解をお聞かせいただけますか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 政省令ということになりますと、御承知のように、この短時間労働者に対して決まった法律に対してその施行をゆだねる委任立法になるわけでありまして、これにそのフルタイムのことを書き込むというのは、これは法制上難しいわけでありますけれども、ただ、さっき御答弁申し上げましたように、こういった考え方が企業の中でできるだけ普及、あるいは、こういった考え方でその処遇を推進していただきたいという考え方を、どういう場かはちょっとまだ確たることを申し上げられませんが、展開していくと、あるいは啓発していくということはあり得るかというふうには考えております。
○柳澤光美君 パンフレット等もやるという、周知のことには力を入れるとおっしゃっていますから、政省令は難しいとしても、やれるだけのことはきちんとしていただきたいということをここで確認をさせていただきたいと思います。
私はむしろ、少し心配していますのは、経営者というのは短時間勤務を何で採用しているかというと、短時間勤務をさせることによって処遇条件を下げることができると、それを理由として、これが一つですね。それからもう一つは、有期契約をすることによって、雇い止めもひっくるめて非常に雇用調整がしやすい、できるだけそうしたいという思いが非常に強いわけですよ。そうすると、法案が出てくると、その裏をかいくぐろうというふうに、決して疑っているわけじゃないんですが、結果、その実態がたくさん出てくる。
例えば、今回の法案の内容が下りていくと、そうか、フルタイムパートにしてしまえばこの法案の適用を受けなくても済むというふうに企業が考えるかもしれませんが、そんなことはないって断言できますか。
○政府参考人(大谷泰夫君) この法案の趣旨は、通常の労働者に対し、それを基準としてパートタイム労働者のその処遇なり、そういった労働条件を近づけようということで考えているわけでありますけれども、今おっしゃったように、じゃ、その通常の労働者の方のまた条件が変動することがないかと言われれば、ないと断言することは難しいと考えます。
○柳澤光美君 正直にお答えいただいて大変有り難いんですが、私も本当にその辺を懸念しているんです。職場にいらっしゃるパートの皆さんもその辺を一番懸念している。
実態とすれば、七時間で契約しているんですが、本人はフルで働けると。しかし、契約が七時間しかできないと。実態は毎日一時間以上の残業になってフルで働いているというパートさんもたくさんいらっしゃるんですよ。
私は、その声の中から、本当は短時間労働というのは、自分の時間を守ってほしいという本人の希望でやった場合には残業をできるだけしない方がいいんですね。そうしてあげなければ、本人が希望して短時間を選んでいることにならない。それが恒常的に残業になる。そんな中でこんな声もあります。
七時間で契約をして、残業一時間やる。ところが、一時間の残業に対しては割増しというペナルティーが全く付かない。そうですよね、法制上。でも、働いている人を見れば七時間が契約なんだと。それを働いてくれというのは企業からのお願いであって、たとえ一〇%でも五%でもペナルティーが付いた方がいいじゃないかという声さえ今上がっているんです。
ということを短時間勤務の場合にはもう一回根幹に入って対応策を取っていかないといけないだろうというふうに私は思いますが、局長、いかがですか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 先ほど申し上げましたように、この法案は、通常労働者に比べての処遇を近づけようということで、いろんな条件設定なり、それから事業主に対する義務等を果たしたわけでありますけれども、それを合理的な理由がなくてそれで条件を切り下げる等によって、言わば実際のこれまでの処遇を不合理な引下げを行う、こういった実態についてはどうするかということでありますけれども、これは、法律にそこを明快な別に規定があるわけではありませんけれども、これは一般原則には戻りますが、いわゆる労働条件の、脱法的な理由であるかどうかは別にして、そういう不利益変更を事業主の一存で合理的な理由なく一方的に行う、こういったことはおよそ法的に容認されないと考えておりまして、万が一、そういう合理的な理由のない労働条件の引下げということが行われた場合には、これは個別労働関係紛争解決促進法によりまして紛争解決の援助が受けることができるわけでありますが、そういった援助のあることを周知するとともに、現場でもこういった今回の制度改正について周知していかなければならないと考えております。
○柳澤光美君 いわゆる、局長さん始め厚生労働省の皆さんが大変私は苦労されていることはよく分かっています。ただ、企業が強く反対をしたり抵抗しているということは、非常にその辺が私は心配しているんです。
あわせてお伺いしますが、これは何回も答弁いただいていますが、私は、経営者というのは、人件費を今、ずっとバブルがはじけて以降、コストとしてしか考えていませんから、少しでも人件費を削りたいということに強引な人員削減というのをしてきました。現実の現場の実態を私はずっと全国を歩いて見てくる中で、気を付けないと、このパート法案の改正により逆に格差や差別が拡大するのではないかという危惧さえ感じています。
例えば、今回の差別禁止の対象のパートを限定しました。とすると、雇用期間を無期から有期に変更する、さっきみたいにフルパートにする、あるいは現行の社員の転勤や職務内容の条件を理由にパートへの切替えを進める。会社側の一方的な労働条件の不利益変更というのは止まるどころかもっと起きてくるのではないかなと、格差がまだ下手をすると拡大するのではないかなという心配を私はしています。
もう一度、労働条件の切下げということに対して、厚生労働省としてどういう歯止めを掛けるのか、簡潔にちょっとお答えいただけますか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 一部先ほど申し上げましたことと繰り返しになりますけれども、この労働条件の不利益変更、これを事業主の一存で合理的な理由なく一方的に行うということは、これは一般法理でも許されないと考えておりまして、今回の法律改正を背景としまして、もしそういった事態があった場合には、これは個別労働関係紛争解決促進法で紛争解決の援助を図るということがございますし、それから、もちろん御相談いただければ、これは都道府県の労働局で積極的に対応する体制を取ってまいりたいと考えております。
それから、若干補足になりますけれども、今回の法律改正で格差が広がる、いろんな御懸念がございますけれども、例えば、御承知のように、今、販売業等ではいわゆる正社員に非常に近い、職場の言わば主任をしている、あるいは店長級の職員に対して、これは正社員とは違うことを前提にしながらも、賃金体系を整理して相当明快な人事管理が始まっているわけでありますが、そういった形で整理されていくということであれば、非常に不分明な契約の中で差別禁止対象に、言わば正社員とほとんど分からないような処遇をしていたものを合理的に管理されていくということでありまして、そういう流れが今回促進されるのであれば、それはそれで公正が高まる、あるいは働いている方の納得が高まるということで、プラスの面も生じるのではないかと期待をしているわけであります。
○柳澤光美君 後ほどちょっとお話をしたいと思いますが、私自身スーパーの出身でありまして、UIゼンセン同盟というところから応援をいただいて議員になりました。ですから、職場の実態というのはつぶさに見させていただいておりますし、一番大事なことは、パートで働く皆さんが労働組合、非常に今労働組合が進んでいます。もう三十万を超える皆さんが組合に入っていただいて、それで労使できちんと話していろんな制度がつくられる、これがいいだろう、一番パーフェクトな形だろうと思うんです。ただ、日本の企業はほとんどは組合がない、ほとんどが中小零細の企業ですよね。こういうところにどう目を当てていくのかというのが私は問題だと思っているんです。
そこでお伺いしたいんですが、これもずっと議論になってきているんですが、今回の法案では非常に狭めてしまっていて、例えば第九条では、賃金について、その賃金、で、わざわざ括弧を付けて、通勤手当、退職手当その他の厚生労働省令で定めるものを除くという表現を取っています。もう一度確認させてもらいますが、この厚生労働省令で定めるもので除くものはなんですか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 改正法案の九条に基づきまして厚生労働省令で定めるものを除くということについて考えておりますのは、現時点では通勤手当、それから退職手当、住宅手当、家族手当等を考えているわけでありますが、これを具体的にどういうふうに規定するかは、今後、労働政策審議会において検討を踏まえて定めてまいるというふうに考えております。
○柳澤光美君 一つだけ聞かせてください。
通勤手当をわざわざ大きく入れています。退職手当は、それは勤務の年数等の有期と無期の関係もありますから多少理解はできないわけじゃないんですが、もう一度確認させてもらいます。パート労働者について通勤手当の支給はどの程度されていますか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 通勤手当の支給状況でありますが、これは平成十七年パートタイム労働者の実態調査によりますと、八六・四%の事業所で支給しているというデータがございます。
○柳澤光美君 八六・四%で支給されているんですよね。
この法案ができることによって、この法案に準ずれば、通勤手当は付けなくてもいいという読み取りをしてもいいわけですか。
○政府参考人(大谷泰夫君) これは現時点でもこれぐらいの普及があるというわけでありまして、この法案の考え方は、反対解釈をすればそれは付けなくていいというふうになるわけでありますけれども、むしろ趣旨は、法律をもって強制することはしていないというだけでありまして、むしろそういった均衡待遇を進めていただくということについて、それを逆行させようというものではないと考えております。
○柳澤光美君 本当に実態を理解されてないなというふうに私は思っていまして、もう一度言います。目的のために手段があるんです。目的が達成されないような手段をつくってしまったら大変なことになるというふうに私は思います。
今、実態はどうなっているか。人が足りなくなってくると、募集のときに一番目立つのは時給になります。今までボーナスを支給していたところがボーナスをやめて時給に、年収は変えないと、見掛けのボーナスは大きく見せれると、通勤手当も付いていますというよりは、通勤手当をなくしてその原資を時給に入れることによって時給を大きく見せると、私は現象が起きるだろうというふうに思っているんです。その懸念ありませんか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 今お話がありましたように、この通勤手当の支給状況につきましても、これは審議会等でも御議論があったんでありますけれども、支給しているといっても、基本給の一部として支給をしているという認識の事業主もあれば、あるいは上限を設けて支給をしているとか、いろいろな形がありまして、現時点でも通勤手当について区々の扱いがされているわけであります。
この審議会におきまして、この通勤手当の問題については相当議論がございました。ちょっと話が長くなりますけれども……
○柳澤光美君 済みません、分かりました。もう聞いていますんで。
それだけ審議会の中で経営側から抵抗がある。
私は、この条文はそもそも努力義務規定なんですよ。こうしてほしいという規定なんですね。とすれば、通勤手当や退職手当等というのをわざわざ除外で条文に入れるということが分からないんです。入れなくていいじゃないですか。できるだけ近づけてくださいと。
もうこれ以上言っても恐らくあれですから。分かりますよ、皆さんが審議会等でも間に立って苦労されて、努力されているし、今までよりも全然今回の法案は、一歩も進んでないなんて私は決して言いません。でも、せっかく進めるときにこういう条文にしてしまうというのは、元に戻ってしまうおそれがある。もっと言えば悪くなる可能性があるというのを懸念をしています。このことは、本当にこの後、政省令なり何なりのところでもう一回やれる範囲できちんとその辺を押さえていただかないと、もしそうなったときにだれが責任取るんですか。良くしようとして作った法案に基づいて、結果、後退してしまった法案になってしまった。このことだけは強く、時間がありませんから、言っておきたいと思います。
次に、先ほどからずっとお願いしていますように、今回の法案は非常に難しいんです。九三年に作ったパート法案がなかなかうまくいかなくて、実は指針で細かく書いて進めてきたんです。それでもうまくいかないから今回の法案を作ろうと。ところが、前の法案とか指針よりも、条文上見るともっと限定されて狭くなってしまっている。とすれば、政省令も含めて周知徹底というのを本当に真剣にやらないとどうにもならないという私はすごい懸念を持っているんです。
もう一度、じゃ、厚生労働省として簡潔に、周知徹底にどういう力を入れるのか、具体的に答弁いただけますか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 今回、新たな規定が盛り込まれて、従来よりもはるかにまた精緻なこれは制度になっていくわけでございます。この法案を円滑に施行するためには、私どもも、もちろん後に戻すような措置で努力するわけでありますが、これ労使双方、関係者に十分御理解いただきまして、現場でも取り組んでいただく、そういう支援をまたしていかなければならないというふうに考えているわけでございます。
そこで、改正法案が成立しますれば、厚生労働省としましては、施行までに具体的な事例や対応方法を分かりやすく解説したパンフレットの作成、配布等により事業主及び労働者に対する改正内容の十分な周知を行うとともに、雇用均等室及び全国に約三百か所設けられております総合労働相談コーナーにおきまして労使双方からの相談に対する懇切丁寧な説明に努め、事業主、パートタイム労働者の理解を進めてまいりたいと考えております。
○柳澤光美君 過去の答弁でも、一つは地方労働局をきちんと使いますと、あるいは地方公共団体の協力も得ますと、ハローワークの窓口でもできますと、だから大丈夫ですと。本当に大丈夫でしょうかね。私は、一つは、本当にその周知という、政省令をもう少し、いわゆる法案じゃないわけですから、政省令もできるだけもっと具体的に書ける範囲まで書く。それから、パンフレット等ももう一回きちんとフォローをする。
その前に、一つは、パート法の指針というのは今回の法案ができたからといって効力をなくすわけではないですよね。
○政府参考人(大谷泰夫君) 指針につきましては、今後、労政審で中身を固めていかなければなりませんけれども、もちろん、後退するのでなくて、従来あったものに、今回より法規範性の強まったものが出たというふうに考えているわけであります。
○柳澤光美君 それを踏まえて周知徹底をきちんとやっていかないと駄目だろうと。
そこで、ここをお伺いしたいんですが、労働局を使います、あるいはハローワークを使います、何か問題あったら言ってきてくださいと。調停もあっせんも何でもやりますと。いいですか。働いているパートさんが職場で問題があったのを一々労働局に行くといった場合には、本当に大きな問題があったときですよ。
今回、一番大事なのは、事業主にも働いているパートさんにも周知をきちんとすると。
今回、私、一番欠落しているのは、短時間雇用管理者という制度がございましたですよね、このことに触れ方が非常に弱いと思っているんです。
最初にお伺いしますが、パートタイム労働法の第九条、あるいは施行規則の第二条、第三条、そしてパートタイム指針では短時間雇用管理者について規定しています。短時間雇用管理者の役割はどういったもので、どういう効果を期待して今までやってきたのか、簡潔にお答えいただけますか。
○政府参考人(大谷泰夫君) パート労働法におきまして短時間雇用管理者の設置を求める趣旨でありますが、短時間労働者の就業実態は多様であり、事業主自らがこれらすべて短時間労働者についてそれぞれの就業実態に応じたきめ細かな管理を行うことが困難な面が多いことから、事業所において短時間労働者の雇用管理の改善等を図るための体制を整備する必要があるためでございます。
この短時間雇用管理者の役割としましては、個々の事業所において中心となって短時間雇用労働者の雇用管理の改善を促進するための措置を講じていただくということを期待しております。
○柳澤光美君 こういう資料が全部出ているんですが、事業主は、常時十人以上のパートタイム労働者を雇用する事業所ごとに必要な知識と経験を有する短時間雇用管理者の選任に努めなければならないということを規定した上で、いわゆる指針に定める事項その他雇用管理の改善に関する事項について、事業主の指示に基づき必要な措置を検討し、実施すること、必要に応じ関係行政機関との連携を行うこと、労働条件、就業管理などに関し相談に応じること、ある意味ではキーマンなんですね。
今現在、この短時間雇用管理者がどの程度事業所ごとに設置されているのか、設置している企業及び人数等概数が分かったら、できれば割合、どの程度まで進んでいるか、把握している範囲でお答えいただけますか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 平成十七年のパートタイム労働者実態調査によりますと、短時間雇用管理者を選任している事業所の割合は四六・三%になっております。
それで、このパートタイム労働法では常時十名以上のパートタイム労働者を雇用する事業主に対し雇用管理者を選任するように努めることを求めておりますが、平成十七年度までに雇用均等室に事業所から届け出られました短時間雇用管理者の数は四万六千八百七十一人となってございます。
○柳澤光美君 ここまで頑張ってきて四六・三%、半分以下です。
そうしますと、周知をして、今回は、この短時間雇用管理者の設置については、差別禁止が入ってきます、過料も入ってきます。という新しいことが動きます。私は、この短時間雇用管理者を必置とするというぐらいの本来条文を入れて、そしてこれを一〇〇%やらないと、日本にある非常に多くの中小企業のところは、早く言いますが、雇用管理さえきちんとされていない、だからこれだけ多くの問題が起きている。
先ほど、局長がおっしゃられたように、大きなところから、労働組合にも入っていただいて、現場に合わせていろんな処遇制度を改善をして転換する仕組みも進んできました。私が一番懸念しているのはむしろ中小のところなんです。特に、事業主の理解が弱い、そのことを分かっている人もいない。私は、介護保険のときに、サービス提供責任者という方が最大のキーマンだという、あっ、キーマンと言って怒られたんだ、キーパーソンだということを主張させていただいたんですが、このことは、私は、今更、法案を変えてくれと言っても恐らくこれは難しいでしょうから、政省令なり何なりでこの短時間雇用管理者を必置をさせて、一〇〇%つくるということを前提にしなければ周知の徹底を図れないというふうに思いますが、いかがですか。
○政府参考人(大谷泰夫君) 先ほど申し上げましたように、この短時間雇用管理者につきましては、今回の法律でも非常に重要な役割を担うということは御指摘のとおりであります。
このパート労働法におきまして、事業主に対しまして短時間雇用管理者を選任する努力義務を果たしているところでありますけれども、しかしながら、現状として現在選任している事業所がまだ半数に満たない状況にあるほか、今般の見直しで、使用者に対して新たに多くの法律上の措置を求めることとしている中で、この雇用管理の担当者の必置を新たに義務付けるということにつきましては労使間で合意に至らず、今回はその義務化を見送ったという事情もございました。
しかしながら、御指摘のとおり、短時間雇用管理者は個々の事業所においてパート労働法の趣旨を実現するための中核となるものでありますことから、厚生労働省としまして、引き続き多くの事業所において選任されるように、事業所に対しまして強く働き掛けをしてまいりたいと考えております。
○柳澤光美君 私は本当に修正動議を出したいぐらいの思いなんですが。
せっかくやろうとしてもう本当に先ほどから問題提起をさせてもらいました。良かれと思ってやっていることが悪い方へ動いてしまう。そのことは、やはり企業の中にそのことをきちんと分かっている責任者を置く、これさえ嫌だと。これさえ嫌だと言って抵抗する。
ただ、厚生労働省の皆さんが、事務方の皆さんが、その中に入って大変苦労をされて、皆さんからすれば、それでもこうやって進めたじゃないかという思いは、私は決して理解しないわけじゃないんです。でも、少なくとも、九三年にできたパート労働法、そして指針を作って、それを一歩進めようと。ましてや、日本全体が三人に一人、一千六百三十三万人が非正規になっているという中で今回の改正とすれば、ここのところが非常に弱いのではないかと。
実は、懸念していますのは、皆さんが苦労されているのは分かるのは、これ五月の二十日の毎日新聞の一面に載った記事です。先回、大臣の方に経済財政諮問会議という国の根幹を決めるところで働く者、代表が入らないで、しかも現職閣僚の発言等も非常に大きな抵抗がある、全部弱いところに進んできてしまう。この規制改革会議でも、最低賃金引上げ反対、雇用規制も見直しというような発言の中に、記事の中に、女性労働者については、過度に権利を強化すると副作用を生じる可能性がある、あらゆる層の労働者のすべてに対して開かれた平等な労働市場の確立こそ真の労働改革だという、よく分からないんですが、要は、これ以上、権利を認めちゃ駄目だということだと思うんです。
その中で、柳澤大臣が大変御苦労していただいているのは分かるんですが、国全体とすればワーク・ライフ・バランスを進めて、これだけの少子高齢化の中で対応していく、是非、大臣にその辺の思いを一言お聞かせいただければというふうに思うんですが。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 今回、労働の形態、雇用の形態、就業の形態、いろんな表現がありますけれども、そういうものが多様化している中で非常に大きな部分を占めておるいわゆる短時間労働者、パートタイムの労働につきまして、私どもこれの処遇の均衡化というものを前進させようという思いで、こうした改正案を提案させていただき、委員の先生方に大変御熱心な御議論をお願いしているという状況にございます。いろいろ論点を提起されたわけでございますけれども、今回、法制化をするに当たって、規範力が高まるということで従来指針等におきまして規定をし、指示を出していた、そういうものがこの法律の中に規定をされなくなったということで、何か規定をされなくなったから逆に今度は指針等でやっていたことが危うくなるのではないかと、こういう御指摘、御懸念からの御意見をいただいておりますが、先ほど来、柳澤委員の質問を聞きながら私も考えておりましたけれども、PRあるいは広報あるいは周知徹底、これに当たりましては、今回の法律改正のところをもちろん分かりやすく解説することは必要なんですが、そこだけを取り上げて解説をすると、そこから今度は、取り入れられなかった、指針等で定めたところはもう全くフリーになってしまうということではかえって誤解を生じてしまうんじゃないかという思いを強くいたしました。したがって、広報あるいは周知徹底の方法にはかなり工夫をしっかりして、法律改正で規範力が高まったところはこうだけれども、これは今までどおり指針にとどめ置かれるけれども、指針の規範性というものがちっとも弱くなっているわけじゃない。これは従来どおりだと。
さらに、趣旨を考えれば、この指針にとどまる部分についても、より一層の行政としての働き掛けをいたしますよというようなことを、総合的に資料の作成等に当たって情報提供をするというようなことを心掛けないと、ちょっと今の御懸念が現実のものになってしまうというおそれもないわけではなかろう、こう思いまして、今御懸念の点はよく理解できますので、周知に当たっての方法についてはしっかりと取り組ませていただきたい、このように考えた次第でございます。
したがいまして、私どもとしては、労政審の各専門の先生方、また労使の合意をいただいたところで法案を作るということを今後ともしっかりやっていきたいと、こういうように思っておりまして、経済財政諮問会議におきましても、もう具体の法制化、法律化という課題については、私どものこの枠組みというものを揺るがすつもりは私はありませんよということを明確にしているところでございまして、今後ともそうしたことについては、今の委員の御意見等も踏まえてしっかり取り組んでいきたいということを申し上げたいと思います。
○柳澤光美君 本当に率直な御答弁ありがとうございます。経済財政諮問会議あるいは規制改革会議とは、私たちも一緒に、厚生労働省と一緒に闘わしていただきたいというぐらいに思っておりますので、是非よろしくお願いしたいと思います。
最後になりますが、短時間労働者の問題というのは、そこを詰めれば七割の方が女性であるということであります。この法案の根幹は、もう男女差別の問題というのが根幹にあるんだということが大きなウエートだというふうに考えています。
国連の女性差別撤廃条約を日本は二十年以上前、一九八五年に批准しています。その前文には、母性の社会的重要性並びに家庭及び子供の養育における両親の役割に留意し、出産における女性の役割が差別の根拠となるべきではなく、子の養育には男女及び社会全体がともに責任を負うことが必要であることを認識し、とあります。
しかし、日本の社会はいまだに、妊娠、出産、育児を理由として七割の女性が退職しているのが実態です。その後、それらの人たちが、多くがパートタイマーとして再就職をしている。その処遇は正社員に比べて大変低い。年収で比べれば三割ですよね。出産における女性の役割が差別の根拠となってしまっているというふうに私は考えています。
今回の改正パート法案の目的部分にも書かれているように、日本社会は急激に少子高齢化が進んでいます。少子化には様々な要因があると思いますが、少なくとも妊娠、出産、育児と仕事とを両立しようとする女性に対して、私は企業や社会が冷たかったのではないかと、出生率一・二六というのは私は女性たちの無言の抵抗だと感じています。
次世代育成支援対策推進法により国、企業が支援策を進めようとしており、認定を取得した企業名も公表されるようになりました。その一方で、企業に対してはもっと強い強制力を持っていかなければならないと私は考えています。良いことは良い、悪いことは悪い、明確にすることが必要だろうと。その大きな柱が私は今回のパート労働法の改正であり、パートタイマーへの均等・均衡処遇を進めなければならない、少子化改善に向けての取組だというふうに考えています。
しかし、結果は、一九八五年、男女雇用均等法を作る際に経営者から大きな抵抗があって、こんな法律を作ると日本の企業はつぶれてしまうと言われたというふうに聞いています。そのころと何も変わっていない、場合によってはもっと悪化している。今回のパート労働法についても、同様に経営側からは、局長もお答えになっていたように、大変な抵抗がある。その結果、実効性においては極めて問題が大きい法案だと私は考えています。答弁でも、これが精一杯であり、これ以上は難しいという、言い逃れとは言いませんが、苦しい答弁が続きました。
しかし、目先の問題にとらわれないで、日本の社会をこれからどうしていくんだという視点で法改正に当たるべきだということを問題提起をして、質問を終わります。
ありがとうございました。
○足立信也君 民主党の足立信也でございます。
先週、前回は、総理大臣の本会議答弁を基に質疑をいたしました。今日もそれを踏襲いたしますが、この法案の条文に沿った形で今日はやりたいと思っております。
主に前半は、今まで質疑の中でちょっと視点が足りないかなと私自身が思っております専門資格あるいは専門職の短時間労働者、このことがちょっと弱いような気がいたしまして、その点についてまず初めに集中的にお聞きします。
これは八条関係、差別的取扱いの禁止のところにかかわると思うんですが、例えば総務省の労働力調査で、平成十七年、女性の短時間雇用者の多い職業は、一番が卸売・小売業、二番目が医療、福祉の分野になっています。これは、特に介護や社会福祉、障害者福祉の面で女性が多いと実感されると思いますが、私は、実は今医療機関というか病院、ここに非常に多くの短時間労働者がいるということをまず指摘して、その点について聞いていきたいと思っています。
そこで、まず医療機関の場合、どういう短時間労働者がいるかということなんですが、まず嘱託。これは非常に専門性が高いので、その業種ごとにいろんな労働条件が付けられています。まず嘱託がいるという。私もそうです。それから臨時職員。これもやはり専門職がそれぞれ異なっておりますから、それぞれ単価が違います。専門職。で、臨時採用、そしてパート、アルバイト。これは比較的ルーチンワークに近いところがありまして、単発的なんですね。ここでパート、アルバイトが出てくるわけです。
先ほど挙げました嘱託や臨時採用あるいはアルバイト、パートというのは、これはすべて今回、審議されております法案に該当する短時間労働者です、すべてがですね。特に専門職の場合は、正職員との業務区別は全くないんですね。ただ、ありますのは夜勤がないとか当直がないとか、そういう違いで、正職員ではなくなってきているわけです。
これは医療機関が今どうしてそういう短時間労働者が非常に多いのかということは、明らかにこれはもうローコスト化です、病院のローコスト。一つの手としてアウトソーシングですね。請負や派遣が非常に増えていることと、そして二番目が今回ありますような非常勤の採用です。これはもう病院経営上ローコスト化と、人件費の削減ということが主なねらいなわけです。
初めに、医師以外のコメディカルについてお聞きします。
私、二、三の病院で調査といいますか調べました。例を挙げますと、看護師全部で四百三十二人中、非常勤が四十九名、一一%、放射線技師や臨床検査技師あるいは理学療法士百三十二人中二十八名、二一%が非常勤、介護の関係、百二十九人中二十八名が、つまり二二%が非常勤、そして事務職は百七十八人中八十二名、四六%が非常勤。つまり、医師以外で八百七十一人中百八十七名、二一%が非常勤、こういうことになっているわけですね。患者さんから見ると、この方は正職員あるいは非常勤あるいは短時間労働と、全く区別付きません。患者さんから見れば同じです。
で、その短時間労働者、今回の法案に該当する方の、先ほど言いましたように、専門職に限って私、今聞いております。そのミッションですね、使命とか責任とか、そういうことは正規の労働者、正規の職員とその短時間労働者、違いがあるんでしょうか。よろしいですか。
○政府参考人(松谷有希雄君) 医療機関で働いているコメディカルスタッフ、技術職員、いろいろな職種の方がいらっしゃいますけれども、その働き方もそれぞれの専門に沿っていろいろ違うというふうに承知しております。
そのミッションでございますけれども、これはフルタイムの雇用の方あるいは短時間労働の方、それぞれで違うのかという御質問でございますけれども、技術職としてのミッション、患者さんに対するその奉仕の仕方といいますか、仕事の仕方ということについては変わらないものだと思っております。
○足立信也君 そうなんですね。患者さんに対しては、やはり病院の職員というのは非常勤であろうが正規の職員であろうが、ミッションとしては変わらない、これが当然皆さんそう思われているでありましょうし、正にそのとおりです。
じゃ次に、これ医師についてお聞きいたします。
前々回の質問で、この四月十日に開かれた地域医療支援中央会議に出されました日本病院会の資料、このことに対して柳澤大臣の評価をお聞きしたんですけれども、病院勤務医の実態をうかがい知ることができたと、できるという答弁をいただきました。ですから、それに基づいて、先ほどはコメディカルですが、今回は医師についてお聞きします。
これは、十五年の四月と十八年の四月を比較した場合に、病院にとって、この管理者に聞いた場合ですね、医師が増えたというところは四九・七%、半分あるんです。確かに増えていると私は思いますよ。医師は増えております。で、減ったが三四%です。ところが、これから質問ですが、病院経営や医師定数などを考慮しないで、地域の医療ニーズに対して良質かつ適切な医療を提供するためには医師は足りているかという設問がございます。これに対する回答、勤務医、五千、済みません、五百七十六の病院管理者ですね、の回答を教えてください。
○政府参考人(松谷有希雄君) 社団法人日本病院会が実施をいたしました医師確保に係る調査におきましては、地域の医療ニーズに対して良質かつ適切な医療を提供する観点から医師数が現実的に足りているかという質問がございまして、これに対する回答でございますけれども、医師が足りていると回答したのは五十三病院、九・五%であり、医師が足りていないと回答したのは五百三病院、九〇・五%という結果となっております。
○足立信也君 先ほど言いましたように、病院管理者から見ると医師は増えているんです。病院の医師は増えている。しかし、足りているかどうかとなると、九〇%以上が足りないと答えているんです。これは何か。二つ考えられると思うんですね。医師の仕事内容が変わったということと、もう一つは、その仕事をやらなければいけない実質人数が減ったということです。このどちらかが考えられるんです。
勤務医五千六百三十五人が回答しているわけですが、計算しますと、九三%がこれ常勤の医師が回答しています。ほとんどが常勤の医師が回答しております。そこで、勤務時間が増えた人と、三年前に比べてですね、勤務時間が増えた人と減った人の割合及び増えた理由、なぜ勤務時間が増えたのか、この理由の最も多いものを教えてください。
○政府参考人(松谷有希雄君) 先ほどの日本病院会の実施いたしました勤務医に関する意識調査の中で、勤務時間が五年前と比べて変わったかという質問がございまして、これに対して、勤務時間が増えたというふうに回答した者は二千百六十八名、三八・五%であり、勤務時間が減ったと回答したのは九百八名、一六・一%でございました。なお、勤務時間は変わらないと回答された方が二千二百三十六名、三九・七%ございました。
この勤務時間が増えたと回答された二千百六十八名の方に対してその理由を尋ねていらっしゃいますが、最も多く挙げられた理由は、患者数及び診療時間が増えたほどに医師が増えていないというものでございまして、これが六五・八%となってございます。また、書類を書く時間が増えたというものが五四・七%、会議等が増えたというものが四五・八%、これは複数回答でございますので数が一〇〇%以上になってございますが、そういう状況でございます。
○足立信也君 ポイントだけ繰り返しますね。
医師は増えているんです。そして、常勤の方の勤務時間も増えているんです。なぜなのか。それは、今ございましたように、患者数及び診療時間が増えたのに医師が増えていないのと、書類を書く時間が増えた、会議が増えたと。これは、特に後者の二つは、主に常勤の医師が負っている内容なんですね。つまり、医師は増えた、しかし勤務時間が増えた原因の多くは、常勤の方にその内容の負担が増えてきているということが今のアンケートの数値から私は言えるんだと思います。
そこで、これ昨年の医療制度改革のときにデータとして私、出した記憶があるんですが、病院への立入検査で、医師充足状況、平成十六年度の医師充足状況というのがございます。常勤の医師で、病院の患者対医師の比率をきちっと適合しているというのは三五%しかありません。そして、今全国で常勤の医師は十三万一千人、非常勤の医師は十二万三千人ですね。先ほど私、コメディカルのことを申し上げました。大体二割以上が非常勤であると。ところが、医師はほとんど同数ですね、常勤と非常勤が。こういう事態になっているんです。残念ながら、この調査は平成十六年に一回行われただけで、その前も後もどうもないみたいなんですね。
私の実感として、病院に勤務する医師は非常勤が非常に増えていると思います。これは以前も柳澤大臣と何度か議論しましたが、産婦人科も小児科も明らかに三十代、妊娠、出産を契機として常勤を辞めていかれる、五割以上の方が辞めていかれる。これも明らかに示していることで、病院の非常勤、つまり今回の法案ではパート、短時間労働者ですから、先ほど嘱託のこと、それから非常勤採用、それからパート、アルバイトのこと、すべて含んでいますから、この働く形態の方が医療機関で非常に増えてきているということが実態なんですね。
その目的は、先ほど言いましたように、ローコスト化。診療報酬はここ十年ずっと下がっているわけですね。そして、となると、患者数を増やしていくしかない。患者数を増やしていくためには医師を始め従業員、仕事にかかわる人を増やしていくしかないわけですね。となると、診療報酬が下がっているわけですから、給料を下げるしかないわけですね。そのためにはどうするか、人件費下げるためにはどうするか。短時間労働者を増やすしかないわけです。短時間労働者を増やしたがために、正規の職員は減ってしまった。正規の職員は責任と負担が増大してきた。会議や資料、先ほどお答えになったとおりです。その結果、どうなったか。正規の方が病院を辞めていくと。
私は、これはそういう循環になっているんだと思うんですね。これははっきり言うと、専門職の使い捨てじゃないかと私は思っています。こういうことが悪循環として今現実の問題として起きているんだと私はそう解釈しておりますが、大臣の見解はいかがでしょうか。
○国務大臣(柳澤伯夫君) 病院のお医者様について、常勤というか正規のお医者さんと、いわゆる短時間労働の形を取るお医者さんとの組合せのお話がございました。
私どもとしましては、日中勤務のみに短時間のお医者さんが勤務されるという場合には、常勤のお医者さんが夜勤をされるというようなこと